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「国家の罠」を興味深く読む
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   夏椿



当時テレビでは「ムネオハウス」が連呼されていた。
鈴木宗男氏はビジュアル的には得しているタイプではないと思う。
声も高い方で、否定したり弁解する姿は氏の無実を素直に信じるには値しないように見えた。
私も含め日本国民は皆彼を疑い揶揄していたとおもう。

佐藤優著「国家の罠—外務省のラスプーチンと呼ばれて」は、そのいわゆる「鈴木宗男事件」で、佐藤氏自らも起訴され有罪となったわけだが、そのとき何が行われていたかを克明に記している。

国家は鈴木宗男氏をはめるために、佐藤氏については、鈴木宗男議員の手足となりロシア外交を進めていたがために落とされなければならなかった。そして、背任と偽計業務妨害の容疑により逮捕されたのだった。
かくして512日間に及ぶ拘置期間中の検事とのやり取り、心の動き、裁判の方向付け、なぜ鈴木氏および自分が「国策捜査」の罠にはめられたかの思索などが書かれている。

精神的、肉体的なタフネス、おそるべき記憶力、知への渇望は驚くばかりだが、なにより、寝返ることなく否認し続けたこと、鈴木氏を裏切らなかったことに、安堵を覚えた。

「国策捜査」は最初から有罪が決まっていることだ。
国家は、「ターゲット」を逮捕しマスコミによりクロと宣伝してもらえば、まず第一の目的は達せられる。被疑者ははじめから負けは明らかなのだが、寝返って自分の非を認めたふりをし反省したふりをすれば、むしろこれからの人生は生きやすくなるし、早くシャバに出られる。でも、彼はそれをしなかった。

佐藤氏は「国益」(北方領土4島の返還と2000年までにロシアと平和条約を締結させること)のためにロシアとの外交をしていたわけだが、自分が有罪と認めれば、外交の歴史事実が曲げられてしまう。また、鈴木宗男氏に対する裏切りも許すことはできなかった。

この本を読んで強く思ったことは、人には「信じられる人」と「信じられない人」がいるということだった。
寝返った人を一概に批判はできないとしても、人は将来の生きやすさのため、家族のため、金のためなどいろいろなことを守るために妥協する、嘘をつく、濁りを持つ。
「信じられる人」は多くはないかもしれない。それは誠を持っているかどうかと同じとおもう。

佐藤氏の不幸中の幸いは、担当検事の西村氏が誠を持っていた人だったということで、お互い立場上は敵なのであるが、信頼関係が芽生え大きくなっていったこと。検事は時として被疑者に惚れることがあるというが、西村氏も佐藤氏に対し似たような感覚をもっていたのではないか?
また、読んでいて心地よかったことは、佐藤氏の他人に対するまなざしがどの職業、立場の人であっても平等に見られる人であるということ。拘置所職員に対してや、確定死刑囚に対しても。

とある確定死刑囚、本来名前を知ることはないはずなのだが、たまたま知ってしまったその名は(それは隣の独房に入れられている人だったのだが、)30年以上前、自衛隊と銃撃戦をかわし世間を騒然とさせたたリーダー格の人だった。その人は囚人からも拘置所職員からも一目置かれているということで、その人のありさまはなかなか清々しいものだった。

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   水場を内側から見て


「国策捜査」ははじめから有罪と決まっていること、と言えば最近重なるのは、原発の「ストレステスト」やらで、これは原発推進の人からも反対の人からも疑問視の声が上がっているのだが、テストをする人たちも、これまで推進してきた人々であること、コンピューターのシュミレーションにすぎないこと、だから、いずれクリアーすることが予測できることなどから、(だからはじめから無罪?)多少時間は延びるとしても、再稼働にゴーサインが出るのはまちがいないかもしれない。

この期に及んで、わたしはお金のためにまだ推進しようとする人々の気が知れない。
もしも、それほどお金が大事なら、だとしても、原発でなくてもよいはずだ。
あらたな自然エネルギーでも不可能ではないだろう。
既得権益にしがみつく頭が硬直している人々だ。そして、「信じられない人々」だ。
by sakillus | 2011-07-12 22:52 | Comments(0)
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